【解説】通所介護の「送迎時の事故」6つの視点から考察(前編)
2026年9月18日、東京地方裁判所の大野晃宏裁判長による、ショッキングな判決が出されました。
デイサービス送迎後に転倒死亡事故 介護施設側に賠償命令
https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260918de51152
というニュースです。
概要は以下の通りです。
・2023年12月、東京都墨田区のデイサービス
・デイサービスを利用した女性の帰りの送迎時
・自宅のアパートまでお送り
・お送り後、女性が2階に上がる階段で転倒して死亡
・女性側の遺族が「施設側が女性に付き添わなかったために事故が起きた」として、約3400万円の損害賠償請求
・2026年9月18日、東京地方裁判所の大野晃宏裁判長による判決
・介護施設側は、筋力の低下や腰の骨折による入院歴などを記した資料を受け取っていた
・裁判長は「本人や親族などに過去の転倒歴などを確認すれば身体の状況を把握でき、危険を具体的に予測できた。こうした注意義務を怠り、事故が発生したと言わざるをえない」と指摘
・親族側には、本人や親族が転倒についての不安を積極的に示さなかった過失がある
・約1800万円の損害賠償を施設側に命じる(過失相殺)
※このコラムの執筆時点でで、裁判記録はまだ公開されていません。
※2026年9月25日時点の、報道記事をベースとしたコラムであることをご了承ください。
裁判例検索
https://www.courts.go.jp/hanrei/search7/index.html
さて、この判例については、介護業界から様々な意見が出ています。
介護事故における判例は、過去にも様々なものがあります。
法律とは非常に曖昧なもので、過去の判例が重要視されます。
(日本の法制度は、成分法を基本とする制定法主義なのですが、現実的には判例法主義に近い状態で、判例が非常に重視されています)
また法律とは、正義と悪ではなく、感情的なものでもなく、淡々としたプロセス重視のものです。
今回は、通所介護の送迎に関する事故について、6つの視点から解説を行っていきます。
1.損害賠償の金額について
医療事故や介護事故で、直接の原因や間接的原因により、結果的に「死亡」されてしまった場合、高齢者であっても驚くような損害賠償金の額となります。
介護施設での誤嚥や転倒を原因とした怪我や死亡が起こった場合、死亡慰謝料は1000万~2000万円とかなりの高額です。
これは、慣例的に交通事故の損害賠償金に準じた計算によるためです。
日弁連交通事故センター東京支部が編集した、通称「赤い本」と呼ばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に従って計算されます。
損害賠償額=死亡慰謝料+葬儀費+逸失利益
逸失利益とは、トラブルがなければ、本来将来得られるはずだったのに得られなくなった利益や収入のことをいいます。
介護サービスを利用する高齢者は働いていないので、収入がないのでは?と考える人もいるかもしれませんが、「年金」が収入と考えられます。
平均寿命に近い方や超えている方もいらっしゃいますが、この平均寿命は0歳児の平均余命のことを指します。
そのため、どの年代であっても、その年令からの平均余命がありますので、逸失利益が存在することになります。
逸失利益=基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × ライプニッツ係数
就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/common/data/syuro.pdf
平均余命年数とライプニッツ係数表(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/common/data/yomyou.pdf
主な年齢の平均余命
https://kaigooutbrain.com/1922/
今回の事故の事例で考えてみます。
・平均余命 7.26年(ライプニッツ計数では8年とみなす)
・ライプニッツ計数 7.020
・生活費控除率 30%
・年金 年180万円で仮計算
・葬儀費 150万円
・死亡慰謝料 2000万円
このあたりの数字で計算してみると、
損害賠償額=2000万円+150万円+(180万円+(1-0.3)×7.020)=約3000万円
となります。
これに、弁護士費用等を考慮すると、遺族側の約3400万円の損害賠償請求というのは、とても理に適った金額となります。
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